主人公

2/2
前へ
/132ページ
次へ
あぁ…私は、なぜこんなにも… 「俺たち、別れないか?」 夜ご飯を食べている時に、言われた。箸を落としてしまった。 震える声を必死に隠しながら… 「なっなんで?」 「俺さ、お前より妹の方がタイプなんよ」 鈍器で殴られたような気がした。 またか…と目をつぶった。 私の好きな人は、みんな…妹に奪われていく… そして、虚ろな目で彼に、別れを告げた。 次の日、泣き腫らした目で劇団へ行くとみんなが集まっていた。 何か揉めている。 「どういうことですか!?侑香の役よ!」 「侑香が、どんだけ頑張ってきたか座長も知ってるでしょ?」 「妹でも、やっていいこと悪いことがあるだろ…」 「うるさい!仕方ないだろ!妹の方が有名なんだから!」 「最低…」 私は、呆然とした。私の…念願の主役が…演技未経験の妹に取られてしまった… 何で…何で…必死に頑張ったのに…両手からこぼれ落ちていく。 知らない間に、膝から崩れ落ちた… 座長は、私に気付く。 「妹の事務所が強いんだ…こんな小さい劇団…すぐ潰れちまう…お詫びと言っちゃ…なんだが、これ…高級ホテルのチケットだ… これで許してくれ…」 とチケットを握らす。 そんなもの、いらない…欲しいのは、主役… 許さない… よくも…私を… そうだ…妹を…本当に 夜になり、ネットで知り合った男と待ち合わせをしている。 そして男が、問う。 「どんな奴がいいの?」 「なるべく踠き苦しむ奴で…お願い…」 「ハハッ姉ちゃん、どんな人にソイツを使うの?男?」 「妹よ…」 男は、黄色い歯を剥き出して笑いだす。 「姉ちゃん、いい壊れ具合だ!ほらよっ!これ!」 と渡された。もう後戻りは、できない。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加