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どんどん…どんどん…陽が落ちていく…
落ちると共に私の覚悟は…
ホテルのレストランは、美味しそうな匂いがしていた。
まるで、最後の晩餐では、ないだろうか?という程に食事が豪華だ。
伊勢エビや刺身の盛り合わせ、山菜の炊き込みご飯、柔らかそうなお肉を目の前でシェフが焼いてくれる。
隣で、
「う~ん!美味しい!マネージャーに連れていってもらったお店も美味しかったけど…ここも、おいしい~!!!!!」
「うん、おいしいね」
「お姉ちゃんなんて、こんないいお肉食べたことないでしょ?劇団員じゃ、無理だよねー」
「…えっ?」
「私、心配してるんだよ?お姉ちゃんが、演劇をしてるって聞いた時から!
な~んでも知ってるんだ~♪な~んでも~♪
だからね、この前、マネージャーに無理いって劇団から脚本を買い取って貰ったんだ~」
「…その脚本のタイトル、“キス”?」
「よく知ってるね~!あっ!お姉ちゃんが主役だったんだっけ?お姉ちゃんには、無理だよ~恋愛もしたことないし、キスも、したことないでしょ?」
「…」
この妹は、本当に…全てを奪っていく…
目の前が真っ暗になる。
「ワインでございます」
シェフが、ワインを二つ置いていく。
頼んでないと告げようとすると、サービスですと言われる。
すると、シェフが顔色が悪いと心配していた。大丈夫とは、言えない…
智香は、シェフにお肉を頼んでいる瞬間…私は、ワインに買ったモノをサッと入れた。
入れた!入れてしまった!
早く、早く、飲んで!!
智香がワインに口を付ける。
すると、目があった。
「フフフ…お姉ちゃん。悪いことは、やめた方がいいよ~♪」
「えっ?」
動揺した。目の前に、私の買ったモノが妹の手にあるからだ。いつのまに…
「お姉ちゃんは、私に敵わないし!一生、私の影で隠れてて?」
と笑いだす。
私は、いてもたってもいられなくなり…無我夢中で走った。
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