24人が本棚に入れています
本棚に追加
計画
勇輝…
あなたを守れなくて…ごめんね…
親、失格だわ…こんなことになるなんて思わなかった…
もう一度、あなたの声が聞きたい…
病院を出てから、スーパーへ向かう。
夕飯の献立を考えながら、野菜売場で、うろついていた。
そして、トンと肩を叩かれ振り向くと勇輝の小さい時からお世話になっているママ友・杉森泉さんだ。その横で恥ずかしそうに娘の、はるなちゃんが手を振ってくれる。
泉さんは、満面の笑みで
「こんにちはー!スーパー混んでるね~今日はるなの通院の日でさー遅くなちゃったよ!」
「そうだったんだー!はるなちゃんの…その指…」
はるなちゃんは、両手の中指の第一関節がないのだ。
泉さんは暗い顔で
「まだ小さいし…ダメージがあるから、まだ手術できないって…」
「…そう」
泉さんも言いにくそうに
「もしかして今日…病院行ってた?」
少し泣きそうになるのを我慢して、
「相変わらず、眠ってる。うちの王子は、いつ目覚めるのかしら?」
フフフと少し笑い合う。そうしないと、心がつぶれてしまうから…
カランカラン
何だろう?と後ろを振り向くと、店員に
「福引券が2枚あれば、福引ができますので、もしよかったら~」
と言われ、なんとなくやってみる。
私は、どうせタワシかティッシュだろうと思っていたら急に
カランカラン
「おめでとうございます!!アテーナーロイヤルホテル行きの旅行券プレゼントー!!」
とても驚いた。泉さんとはるなちゃんも興奮している。
アテーナーロイヤルホテル、勇輝の病院に近い…
すると、また肩を叩かれ泉さん?と思ったら…もう一人のママ友・有馬沙織さんだ。
コイツの息子・蓮が、勇輝をあんなことにあわせた人殺しに近い人間…
沙織さんが
「すごいじゃん!アテーナーロイヤルホテル、高いし!最高だよ!理子さんの旦那さんの稼ぎじゃ無理でしょ?」
私は、よく毎回毎回嫌味がでてくるよね?と思った。
「…失礼だよ?」
沙織は、気にもとめないで
「家族4人で行ってきな~♪それか私と泉さんと行くのは、どう?」
本当に、この人は…勇輝のことを気にもとめないの?アンタの息子のせいで、勇輝は今も眠ってる…
悔しくて、うつむいて…手を握りしめた。
そして泉さんとの帰り道、公園のベンチで
「理子さん…沙織さんを殺さない?」
私は、驚いた。泉さんは、はるなちゃんが滑り台ですべっている所をみながら、そういうのだ。そして、続けて
「はるなはね、今よりも小さい時から…ピアニストになりたいって言ってて…でも指があんなでしょ?私…どうしてもね、指の関節がないから…あきらめなさいって言えなかった…」
私は、泉さんの顔をずっとみていた。
あー私だけが…苦しい…そうじゃないんだ…
泉さんも、はるなちゃんのことで苦しんでいる…
私は、口を開き
「ホテルのことさ…夫に相談していい?」
そういって二人は、自分の家に帰った。
殺人のことは、伝えず…スーパーの福引で、アテーナーロイヤルホテルのチケットが当たってママ友と行きたいと言うと、夫が
「行っておいで、理子は、頑張りすぎだよ?何かあったら電話するから大丈夫だよ」
と言われ、さっそく泉さんに連絡を入れ…
どういう計画でいくか決めることになりドタバタと荷物や色々とチェックをして、そうこうしている内に明日からママ友三人で殺人旅行の始まりである。
最初のコメントを投稿しよう!