喚く

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喚く

ホテルの周辺には、フェリー観光というものがある。そこで、運がよければ親子で泳いでいたり大移動しているイルカ・海から浮上しジャンプするクジラが見えることがある。 三人は、フェリーへ乗りこむ。 そして、潮風を肌に感じながら海を眺める。 白い建物が私の目の前を通る。 ふと、呟いた… 「勇輝…」 私の左側にいた泉さんは、私の手を重ねる。 沙織さんは、イルカが泳いでいるのを見て大興奮していた。 そして、夜ご飯を食べる時間になりホテルのレストランへ行く。 席についてから、談笑していた時…ふと子供の話になったのだ。 沙織さんは 「最近というか…私達、親は…こうして旅行へ行くけど子供達は、全然遊ばなくなったわよね?そう思わない?」 私と泉さんは、おそらく心の中で「怪我させた人と遊ぶ訳ないだろ」と突っ込んだと思う。 不思議に思うのは…怪我させた私達の子供に…なんとも思わないのか? 勇輝は、あれから時が止まっているのよ? アンタの息子は、学校で…また騒動をおこして旦那さんに処理させたって聞いたよ? 本当に…本当に…何も思わないの? 同じ人間なの? 沙織さんが言うのだ。 「ねぇ?勇輝くん、どうしてるの?ここ何年も見てないけど?」 私は…震えた。 「ゆっ勇輝は、もうずっと入院してるの…」 そっと沙織さんの目をみて伝える。 沙織さんは、視線は違う方を向いて興味なさげに 「えー?重い病気?大変ね~」 私は呟くように 「…忘れた?二年前、公園で…蓮くんが息子を突き飛ばしてから…」 沙織さんの目をじっと見つめながら 「息子は…目覚めてないの…」 沙織さんは、目をパチパチしながら嘲笑った。 「蓮のせいにしないでよ!元はといえば、はるなちゃんが下にいて邪魔したからでしょ?ねえ?泉さん?」 泉さんは、無言になっている。 私は、すかさず言う。 「その原因も、蓮くんだよね?」 沙織さんは 「はあっ?!ちょっと、今頃そういうこというの?」 この人には、話が通じない… そりゃそうか…なんでも揉み消すもんね… 私は、立ち上がって 「ずいぶん自分勝手な言い分で…やっぱり許さないや…」 突然、水をかけられる。 「はぁー!?蓮のせいにしないでよ!アンタ達が弱いからでしょ?負け犬の遠吠えってこのことだわ!戻ってきたら、許さないわよ!」 と言って出ていった。 私は、沙織さんが出ていった方を睨む。 泉さんは、泣きながら 「私…言い返せなかった…はるなが、あんなに辛い目にあったのに…私…!私…!!」 背中を擦りながら心の中で思った。 “泉さん…何もしなくていいよ… 私が…私が…” 考えている時、そっと料理が出てきた。 「こちら子羊のソテーでございます。お客様?こちらタオルです。是非お使いください。」 「ありがとうございます。」 と顔をみて挨拶をした。 気にもとめなかったがシェフが出てくるのは、珍しいなと思った。 少しずつ…少しずつ…怒りと悲しみを押し殺して料理を楽しんだ。 すると電話がなった。 でると、病院からだった。 嫌な予感がする…勇輝に何かがあったのだろうか…? 「もしもし…えっ?そっ…すぐ行きます!」 泉さんに伝えて、私は病院へ向かった。
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