別れ

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別れ

どうやら勇輝は…星になるみたい… “死”を受け入れるのは、無理だ…行かないで…私を連れていってほしい… せめて起きて、一言声を聞かせてほしい… 私は、病室で担当医の話を聞く。 どうやら、生きるという能力が機能しなくなっているらしい… 家族が泣いている…私は、なんて無力何だろう… そして、夫が言うのだ。 「…勇輝を楽にさせてやろう…」 あすかは、ずっと泣いていて…私は…まだ信じられなくて勇輝の手をさわる。 「こんなに…こんなに…まだ温かいわ…死ぬなんて信じないっっ!」 「理子!!もう休ませてあげよう。」 と夫は、私の肩に手を置いたのを払いのけ、走って病室を出た。 信じない! 信じない!! 信じない!!! あなたがいない世界…想像ができないよ… 「うわあぁーー勇輝ー!!!!!」 暗闇の…ここがどこかわからないところで泣いてしまった。 そして、暗闇の向こうから何やら足音がした。 「おや?お客様?大丈夫ですか?」 そこには、ホテル支配人の新井さんがいた。 私は、泣いていたのを察してか新井さんは理由も聞かないで案内をしてくれる。 「…教会ですか?」 新井さんは、頷きながらドアを開ける。 「悩んだら、教会の中に入って祈ったり相談したり交流をするのですよ?フフフ」 「…とても綺麗…天国も、ここみたいに綺麗なところかしら?」 新井さんは、ゆっくりと考えながら 「そうですね…そうだったら嬉しいですね…」 私は、床に倒れながら話した。すべてのことを… 新井さんは、静かに 「息子さんが…子供が親よりも亡くなるとは…とても辛い…あなたの悲しみは、はかりしれませんね。」 私は、泣きながら 「訴えてもダメ…警察へ被害届を出しても揉み消される…アイツらが悪いのに…勇輝は…何も悪くない!注意して…こんなことまでするの?人間じゃない!あの家族を私は許せない…」 先程みた勇輝の顔、寝ている顔じゃなくて…笑っている顔を見たかった。 すすり泣く私の泣き声に、凛とした声が 「もしも、その家族を消すことができるなら…あなたは、どうしますか?」 新井さんの顔をみた。 私は、天にもすがる思いで 「本当に…本当に…あいつらを消してくれるんですか?本当に…?」 私からみた新井さんの顔は、朝、私に笑いかけてくれた笑顔ではなく、とても冷徹な作り笑いをして 「お客様が笑顔になれるよう尽力致します。」 と言うのだ。 私は、頭がおかしくなったのか…こちらの新井さんの顔が、人間らしいと感じてしまった。 「では、遠山様。私は、お仕事がありますので離れなければなりません。あなたは、係員が来るまでここで、お休みくださいませ。」 と言って毛布を渡される。 そして、少し眠った。
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