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僕はしあわせだった②
「フリッツ、さっき言ってた出張だけど出発が早まりそうなんだ。1週間後の予定が、3日後になりそうなんだよね」
「ふ~ん。なんか問題でも出たのか?」
フリッツお手製のパンをポタージュに浸しながら、仕事の予定が変わりそうなことを報告した。相変らずふわふわのこのパンは最高に美味しい。
「そうみたい。僕も詳しくはわからないんだけど、訪問先の領地の税収が少しおかしいらしくって。ちょっと早めに行って調べることになりそう」
「そっか。お前の仕事って相変らず大変そうだよな。ま、頑張れよ」
「うん、ありがとう。う~ん、今日のご飯も美味しい!」
僕の仕事は宰相補佐官様付きの官吏。今は書記官みたいな立ち位置だ。
職場はもちろん王宮だ。僕は平民だけど、有難いことにこんなに立派なお仕事に就かせてもらっている。宰相様も補佐官様も他の文官の方々も親切で、平民である僕に対して嫌な事を仰ることはない。
お腹いっぱいご飯も食べてお風呂で身を清めたら、後ろからフリッツに抱き込まれる。これは僕を抱きたいっていう合図。僕もフリッツに抱かれるのは嬉しいから、後ろを振り向いてにっこり笑って「いいよ」と答える。するとすぐに唇が重なって僕たちの夜の時間が始まる。
「おはようございます、ヘルマン様。今日もよろしくお願いします」
「ああ、クルト。おはようございます」
朝、職場へと行けば僕の直属の上司である宰相補佐官様のウォルテア・ヘルマン様がいらっしゃった。
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