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僕はしあわせだった④
それに『氷の宰相』と言われているが、本当は物凄く優しい方だ。僕は結婚しているから、遅くまで仕事をさせないように気を遣ってくださる。『ここが原因で離縁なんて望んでいないからな』と、僕みたいな平民にも優しくしてくださるのだ。
「ウォルテアとクルト、例の仕事だがやはり早めることにする。明後日出発してもらえるか?」
「かしこまりました。その予定で準備していたので大丈夫です。クルトはどうですか?」
「はい。僕もその予定でいましたので大丈夫です」
「よし。ならば後は頼んだ」
やっぱり早まったか。良かった、その前提で進めていて。今日フリッツにもちゃんと言っておかないと。
それから出張の準備と共にいつもの仕事に取り掛かる。何事もなく終わり、明後日は余裕を持って出かけられそうだ。
「フリッツ、やっぱり出発が早まって明後日出ることになったんだ。大体10日ぐらいで帰る予定だよ」
「わかった。体に気を付けて頑張って来いよ」
僕は頻繁にじゃないけど、こうして家を空けることがある。その間、家の事は全くできないし普段もフリッツには甘えっぱなしだから申し訳ない気持ちで一杯だ。なのに嫌な顔せず『頑張れよ』って言ってくれる。
フリッツとは僕が孤児院にいた時からの付き合いだ。僕が子供の時に両親が死んだ。その後、孤児院へと預けられその孤児院にパンを配達していたフリッツと知り合った。
僕たちは歳が一つしか変わらない。だからか自然と仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
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