エピローグ

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 それからすぐに、わたしは真瀬紗央里になった。  海斗さんが、婚約の状態で長い期間を過ごすのを良しとしなかったからだ。それは、わたしへの優しさだと思う。  真瀬のご両親に報告しーーこれはこれで、「やっと!長かった!」「海斗がのんびりしてるから紗央里さんに愛想尽かされたのかと思った」と散々な言われようで、海斗さんが機嫌を損ねて大変だったのだけれどーー、すぐさまわたしの実家にも挨拶に来てくれた。こちらはこちらで、しばらく帰ってこなかった娘が結婚相手を連れてきたと思ったら、大会社の御曹司だったから、両親はひっくり返って驚いていたけれど。  とにかく籍を入れたい、というわたしたちの希望は尊重され、年内には婚姻届を提出したのだった。  取引先には年が明けてから報告することになっているし、結婚式はまだまだ先の予定だ。真瀬の跡取りの結婚式がどれほどの規模になるのか、わたしには想像もつかない。  不安がないといえば嘘になるけれど、きっと大丈夫。  そう思えるのは、海斗さんがわたしを大事にしてくれるという自信があるからだ。毎日、いつでも、海斗さんはその自信をわたしに与えてくれる。  それだけの愛をくれる彼に、わたしも同じだけ返していきたいと思う。生涯をかけてーー。 (完)
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