6317人が本棚に入れています
本棚に追加
誠治とは社内恋愛だった。
三つ年上で、部署は違えど仕事で顔を合わせることも多かった。リーダーシップもあって企画を引っ張っていってくれる彼に、自然と惹かれた。
とある企画で同じチームになって、開かれた懇親会の帰り、二次会に向かうみんなを見送って駅に向かう途中で、くいっと腕を引かれた。恥ずかしそうに視線を少し外して、「送っていく」と言ってくれた。先輩後輩問わずいつも人に囲まれているひとだったから、まさかわたしを選んでくれるとは思わず、飛び跳ねるほど嬉しかったことを、よく覚えている。
それから大きな喧嘩をすることもなく二年付き合ったころ、誠治からプロポーズされた。わたしは25歳で、誠治は28歳。適齢期だったし、そろそろかなあと思っていたものの、実際に目の前で輝く婚約指輪をみたときには涙が溢れた。
それなのに。
あまりに突然、しかも呆気なく伝えられた別れの言葉は、思っていた以上にわたしの心を深く抉った。
だから、決めたのだ。
もう、結婚の約束はしない。
いや。もう、恋なんてしない。
最初のコメントを投稿しよう!