会いタカっタ

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幾年も経過したある日のこと。私は散歩中に、何者かにあの滝壺に突き落とされて死にました。僅か二十六年の生涯でした。 不思議なことに私は霊体のまま彷徨い続けていました。死んだ時に着ていた椿の花の着物を纏い、ふわりふわりと移動を重ねます。気掛かりなのは娘の存在でした。 娘はきっと生きていてくれている。 娘に会いたい。 その思いだけを胸にして彷徨う中、一枚のチラシを見付けました。それが楽器店のチラシだったのです。聞いたこともない店名に疑いつつ、私はその店の扉を開けました。 その後のことは、もうお分かりかと思います。さて本題です。私は娘に会えたのか。 はい、会えました。一体どうやって店主さんは連れてきてくださったのか、私に似た娘は無事に成長し、とても素敵な殿方と並んで歩いていました。その笑顔は生まれた頃からのまま。私の愛しい娘のものでした。 私は霊体ですので直接目の前に現れることは出来ません。でも十分幸せです。私は後ろを振り返り、いつの間にか着いてきていた店主さんに声を掛けます。 「娘を一目見ることが出来ました。とても綺麗になって••••••。私が若くして死ななければ、この方の花嫁となったあの子の傍にいられたのかもしれませんね」 「さぁ、それはどうでしょう」 店主さんは指をパチンと鳴らす。すると一気に周りの光景が変わり、次には私が嫁いだあの邸宅の広間に立っていました。その広間の椅子には娘と、先程娘の隣にいた男がいます。するといきなり男は娘に詰め寄ったのです。 「何ということだっ、君には騙されたよ。まさか君がそんな恐ろしい娘だったとは」 「あら。近寄ってきたのはあなたじゃない。私のことを大して知りもしないうちにノコノコとやって来て、肝心なことを言うと逃げるのね。やっぱり駄目ね、誰も私には釣り合わないんだわ」 「は、と平然と言ってくるから恐ろしいんだ!」 え••••••••••••? 「どうでしたか?娘さんに会って、あなたの死の真相も聞けて。よかったですか?」 彼はこの場面を見て何も思わないのでしょうか。店主さんは冷然とした表情のまま、口元だけで笑います。
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