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同い年位の美女が口にした"勅使河原"という名字は俺の名字で間違いない。珍しい名字なので誰かと間違えているとは考えにくい。
それに、"久しぶり"なんて言ってわざわざ声をかけてくる位だからそれなりに接点があったはずだ。
だがこの美女が誰なのかまるで思い出せない。名前はおろか、一体いつ出会ったのかも。そもそもこんな美人、一度会ったら忘れられるはずがないだろうに。
店員が水を運んできたのでハンバーグセットを注文する。
水を口に含みながらチラリと横目で美女の方を見ると、彼女はスマホに目を落としていた。
しかしどうやら俺の視線に気がついたようで、スマホを鞄の中へしまいこちらを見る。
「待ち合わせしてるの」
「え? あ、そっか、」
改めてその整い過ぎている顔を見るが、やっぱり彼女が誰なのか思い出せない。
だけど今更「あなたは誰ですか?」なんて聞ける勇気が俺にはなかった。
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