さて、私は誰でしょう?

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 ずっと同じクラスだったと言う"ふたき さら"と名乗る美女。  だがその名前を聞いてもピンとこない。そんな名前のクラスメイトがいただろうか?  必死に記憶を辿っていくも、彼女らしき人物を思い出すことが出来ない。 「え~? まだ分からないの??」  ふたきは口元を隠してくすくすと笑っている。 「ごめん、直ぐに思い出すから──」 「ああ、そっか。"二木"じゃ分からないか。だって皆、私のこと"二木"じゃなくて""って呼んでたもんね。持病の薬の副作用で太ってた私のこと、楽しそうにそう呼んでたでしょう?」  スッと体の血が引いていく。 「中学の頃は辛いことが本当に沢山あったけど、一番辛かったのは薬を隠されたことかな。教科書や上履きは日常茶飯事だったから別にいいけど、薬は絶対に駄目だよ。命に関わるから! あ、でも皆私に死んでほしかったんだよね! 毎日そう言ってたし」  冷たい汗が背中を伝って流れる。 「おかげさまで病気も治ってね、薬を飲まなくなったらこんなにも痩せちゃった。ふふ、びっくりした?」  ああ、そうだ。思い出した。俺は……俺達は彼女のことを── 「ほら、よく言うじゃない。"いじめた方は忘れるけど、いじめられた方は一生忘れない"ってさ、あれって本当なんだね」  口の中がからからに渇いていく。謝らないと、そうは思うのだが声が出てこず金魚みたいに口をぱくぱくさせるだけになる。  するとその時、男の俺が見惚れる程のイケメンが颯爽とやって来た。 「お待たせ、サラ」  イケメンは二木の向かいに椅子を引いて座ると、一瞬だけ俺の方を見る。そして小声で二木に「知り合い?」と訊ねるのだが……。 「え? 全然。だよ」  二木はさらりとそう言った。  二木のその答えに、俺は急に自分が情けなくなった。恥ずかしくて、居心地が悪くて、今直ぐに逃げ出したくなる。  もう店を出ようと腰を浮かせかけた時、店員がハンバーグセットを運んできて机の上へと置いたので出鼻を挫かれた。  俺は隣の美男美女の仲睦まじい会話を聞きながら、熱い鉄板の上でジュージューと焼けるハンバーグをただジッと見つめることしか出来なかった。 《終》
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