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和馬が死んだと聞いたのは、今朝のことだった。いつもと同じ朝だったように思う。いつものように朝からスマホでメッセージのやり取りをし、いつものように朝ご飯を食べ、いつものように登校した。それからいつものようにHRが始まるものだと思っていたら、担任がいつもと違った様子で教室に入って来た。そして言ったのだ。和馬が死んだ、と。
「……は?」
俺はスマホに目を落とした。
『おはー
今日数学あるっけ?実田の授業だりー』
『おはよ
さねっち、インフルらしいよ』
『まじ、どこ情報よ』
『C組の山本』
『じゃあ信用ならん』
『それね』
今朝やりとりをしたメッセージの履歴だ。宛名を確認する。
【吉沢和馬】
「は?」
また声が漏れた。
和馬が死んだ? 死んだのはいつだ? 昨夜死んだ? 告別式? 何言ってんだ?
スマホが震えた。
『あー、もう宮沼言っちゃった?もう少し空気読んで欲しいよねー』
「吉沢の告別式は放課後だらか、行くやつはここに名前書いとけよ」
担任の話などまるで頭に入らなかった。再度震えるスマホに、祐樹はその手を離した。
ゴトッと音を立てて、床に落ちたスマホ。
『あ、そうだ 今日遊ぶ予定だったでしょ?
放課後、いつもの場所に集合ね』
「ほらそこ。木島ぁー、スマホはしまっておけよ。堂々と使うな」
『絶対来てね』
青ざめる祐樹に、それは親友を亡くしたものからくるものだと誰しもが思った。小学校、中学校と一緒だった二人は、高校でも一緒だった。家も近く、所謂幼馴染という関係。本人たちは腐れ縁だのなんだの悪態をついていたが、傍から見れば微笑ましいものだった。だから宮沼も無理にスマホを没収するようなことはせず、そっと祐樹の肩に手を置いた。
「まあ、その、なんだ。ま、気を落とすなよ」
気を利かせたようで一切気が利かない担任の言葉など、どうでも良かった。
『絶対だぞ』
震えるスマホを拾うことが出来ない。混乱する祐樹をよそに、HRは終了し、周囲は日常へと帰って行った。
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