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ひゅうう、と風が途切れなく吹いている。先程から段々と風圧の勢いが増し、凍えるような体感温度になっているような気がしてならない。魚沼はぶるっと自らの身体を抱きしめた。
「それにしても寒いな」
ベテランの男は舌打ちして、厚手のダウンのファスナーを一番上まで引き上げた。
周囲が次第にざわつき始める。十月にしてこの冷風。まるでタイミングを見計らかったかのように下がり始めた外の気温。何か得体のしれないものが近づいているような、虫の知らせにも似た予感が走った。
魚沼が、こりゃ家の中でじっとしていた方が幸せだったかなと己の行動を後悔し始めた頃。
「魔女だぁっ!」
突如、誰かが叫び声を上げた。
はっとして、周囲を注意深く見回す。緩んでいた意識が電流を受けて覚醒したみたいにクリアになる。
どこだ? どこにいる?
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