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見通しの悪い夜の街の中、男たちは必死に気配を探る。街灯だけが頼りの闇の深い空間に、異質な存在を見つけ出そうと躍起になる自分たちがいる。これではどちらが滑稽かわからないなと、頭の隅で余計な思考回路が回った。
「いたぞーっ!」
怒鳴り声が響いた。先程自分と話していたベテランの男だ。
魚沼は、男の指さした方角へ、顔を上げた。
それは屋根の上に佇んでいた。
一目見て、見目麗しい男だと思った。
顔の形も体型のバランスも実に見事に調和が取れていて、バーチャルショーのタレントでも対等に張れるかどうかわからないほど、その男は美形だった。女子なら骨抜きになりそうだ。鴉の濡れ羽のごとく艶やかな黒髪。瞳は色っぽく、かつ鋭く繊細に光り、何より彼自身から放たれるオーラというべきか、風格なるものがあった。
(魔女……!)
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