魔女の息子たち

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 相手の身体能力は目を見張るものがあった。こちらが懸命に走り込んでも、それをゆうに超える跳躍力で空高く飛び、ビームを放てば弄ばれるようにかわされ、背中に羽が生えているのかと疑うほど鮮やかに空中を舞うのだった。そして魚沼の攻撃が外されるたびに、喧嘩を売るかのごとく茶目っ気たっぷりにウインクしてみせる。完全に人間で遊んでいる。むかっ腹が立った魚沼は、周囲の状況も鑑みずに魔女の行方を追って突っ走った。 「待て、魔女め!」  瞬間、相手の影がふっと消えた。  消滅、と言葉が脳内に浮かび上がる。男は瞬く間に魚沼の視界から姿を消した。 (何だ、どうなっている!?)  魚沼は確かな興奮を胸に、慎重に辺りを見渡す。そこで初めて今いる場所が自分一人きりである現実に気づいた。もしかして、誘導されていたのか。弱冠二十歳の青年は自らの未熟な実力に悔しく歯噛みする。
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