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「そんな物騒なもん、捨てな。愚かで可愛い人間さん」
魚沼はレーザーを撃った。
鋭い放射線を描いて放たれたビームが男に襲いかかる。が、男は一瞬のうちにかわし、次の瞬間には魚沼の目の前に移動して、レーザーガンを叩き落としていた。手もとに走る痛み。男が魚沼の腕に手刀を当てたのだろう。レーザーガンは地面を転がって二人から遠く離れてしまう。
男と向かい合う形になり、魚沼は知らず後ずさりした。
相手は不敵な笑みを崩さない。
「名前、何ていうの?」
にこりと微笑まれ、魚沼の額に冷汗が垂れた。この状況を完全に手玉に取っている。男は一歩ずつ魚沼に近づき、挑発するように目を細め、口の端を上げ、赤い舌をちらりと出す。ぞくりと身の毛がよだつほど、男の笑顔は妖艶だった。
「ひ、人に名を聞く時は、自分から名乗るのがマナーだ」
かろうじて口から出たのは、情けないほど上ずった声だった。
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