19人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、これって彰くんの?」
焦り始めたのも束の間、牡丹に言われて俺は思わず言葉を失った。そこにあったのは、紛れもなくメロンソーダだった。
メロンソーダというと……さくらが注文していたわけで……となると、幽霊のさくらと会っていたのは本当で……というか、実はいまもそこに座ってたりして……
『小学生の作文になってたら引っ叩いて教えてやるよ』
そんな言葉が頭の中で聞こえてきて寒気がした。これはまさに……
「呪いか何か」
「え?」
思わず出てしまった言葉にギクリとする。
「いや、こっちの話!」
牡丹は不思議そうにこちらを眺めている。これ以上聞かれても困るので、俺は早々にメニューを手に取った。
「何頼もっか?」
「あっ……ごめん、私……こういうのすごく時間かけちゃう人なんだけど……」
「いいじゃん。生きてる特権」
「ふふふ、何それ? ……でもちょっと分かるかも。うん、じゃあじっくり考えるね。生きてる特権で」
金平糖の行方は分からない。
でも……全然根拠はないけれど、彼女とまたどこかで会えるような気がする。
メロンソーダは相変わらずぷくぷくと泡を生み出していて、まるでこちらを茶化しているようだった。
【おしまい】
最初のコメントを投稿しよう!