犬と私

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犬といいますと、私柴犬が大好きでございましてですね。  毎年カレンダーは柴犬のカレンダーを買ってるくらいでして、はい。  やっぱりあの愛らしくて毅然とした風貌!日本が誇れる天然記念物級の生き物だとおもいますね。  一方の私などチビ・デブ・ハゲ・ニート・中卒・高齢童貞・子ども部屋おじさんとユネスコに「生きる負の世界遺産」として認定されるまでありますが、やっぱり自分と真逆の生き物に惹かれるんでしょうね……ほら、生き物って人間でも自分と遺伝子が遠ければ遠いほど、丈夫で美しい子孫が生まれるとかいいますもんね。  ……ま、童貞歴五十年のベテラン中のベテランの私には関係のない話ですけど。  話がそれましたね。  でも、柴犬を飼うとなるとペットショップとかぶらぶらしてても、ハードルが高いんですよー。  まずもってワンちゃんのお値段がン十万で……それからワクチンやらトリミングやら毎日の散歩やら、「自堕落の見本市」として認知されている私にはお金もかける手間もご縁もない、と諦めてしまうわけですよ。  そうなると手っ取り早い犬とのコミュニケーションは「かわいい犬を散歩させてる人に遊ばせてもらう」しかないわけでしてね。  まあ、大方の皆様のご想像どおり、私のようなクリーチャー真っ青の風貌の男ががいきなり近づいてきたら、通報されてしまうのが切ないですけど!  なので、遠目で散歩中のワンちゃんを眺めておりますとね、ワンちゃんは鼻がききますから生理中とおぼしき女性の股間にクンクン臭いを嗅ぎに行ったりするんですよ。  そうしたらなぜか臭いを嗅がれた女性がワンちゃんじゃなく、眺めていた私を思いっきり「汚物を見るような目」で睨みつけていくんですね。  うーん、これはワンちゃんの身代わりと、かわいい女性に蔑まれるという「二重のご褒美」として私の心に石炭をくべる上質のひとときではありますね。  それにしても犬って、みんなかわいい顔しててうらやましいですね。人間みたいに頭ハゲないですし。かといって犬になっちゃうと、そういう美に対する自意識がなくなっちゃうので、犬になりたいとまでは思わないんですね。  あくまで人間としてかわいい女の子にちやほやされたいですね。  もはや犬なんてどうでもよくなってますですね。  「この権力の犬め!」なんて罵られてもみたいですね。ほら、「権力の犬」ってことは大きな組織に雇われてるってことと同義ですから、無職一筋の私からすればとんでもないパワーワードでございましてね。  罵られるほどの悪い男、ってことはこれも「女にとって魅力的な男」と同義ですから。  ベッドで女を左側に寝かせて、マールボロに火をつけてる男、みたいなね。  はい、もうどこにも犬がいなくなってますのは承知しておりますですよ。  だいたいですね、犬は原始時代から人なつっこいオオカミを品種改良していって、人間とは長い長い友だちなんです。  長年友だちが一人もいない「コミュ障ステージ4」の私とは相容れない存在ですよね、考えてみれば。  なんか腹立ってきましたね。  犬ころの分際で「私のもってないもの全部のせ」っていう次郎系ラーメンもびっくりの逆転現象ですよ!  カレンダーも来年は「いけちゃん」のを買うことにします。ぼっち系ユーチューバーの彼女の方が、写真集一冊でも買えば、「お渡し会」で握手やおしゃべりも少しはしてくれますからね。  現実をガン無視して五十年。犬よりグラビアアイドルですよ!  人間に生まれてよかったあぁぁーっ!                   終
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