月夜噺

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……ただね、私は千里が罪滅ぼしの為だけに消えたとは思っておりません。 もう一つ理由があるとするならば、彼女は私にあの美しい姿を見せたかったのではないか、そう思います。彼女が月へと向かうその姿は、まあ大層綺麗でしたから。月の光を浴びて、揺らめく姿の不気味さと儚さと妖艶さは、まさに、この世のものとは思えない美しさでした。 一度あの姿を目にしてしまっては、また見たいと思ってしまうのは致し方ありません。 彼女が何度も繰り返したのも頷けます。 ……そろそろお時間でございます。来月の帰省も晴れることを願っております。そして、夜の道で誰かに遭えることを心より楽しみにしている次第でございます。 皆様もよろしければ、来月、満月が出る日に月行村へお越しください。 この世のものとは思えないほどの綺麗な月夜をご覧に入れられますから。
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