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1 辺境に追放
俺の名前はエイト=サルバコス。
有名貴族サルバコス家の次男坊だ。
だが、今、神殿にて衝撃のスキルを発表されている!
『そなたのスキルは"植物"です。』
神の啓示でそう言われると、みんなは爆笑し始めた。
それはそうだ、植物なんてスキルを俺は聞いた事が無かった…
てゆーか、みんなも聞いた事が無いのだろう…
「やべぇ、アイツ植物だってさ!」
「やだー!
戦力にならないじゃん!」
「いやいや、草刈りしなくて良いから楽かもよ!笑」
爆笑は続く。
俺は帰って両親に「植物スキルだった」と言うと、その日の内に「辺境の領地をやる」と言われて実家から追い出された。
馬車で数日かけて、辺境の屋敷に着いた。
馬車の御者は俺の僅かな荷物を放り出すと、俺を馬車から蹴り出し、その屋敷の前に置き去りにした。
かろうじてもらった地図によれば、この領地は300ヘクタールほどあり、中心部に屋敷が建っているらしい。
そして、絶望的なのは、その300ヘクタールの土地には民家も店も草木一つ無いという事だった。
俺は放り出された荷物を拾い集め、屋敷の中に入った。
5階建の屋敷は埃まみれ、蜘蛛の巣だらけだった。
水道を捻ると水は出たので、布団を干し、水をぶちまけ一階だけでも掃除した。
腹が減ったので、パンとりんごをかじってその日はジメジメしたソファで眠った。
次の日、俺は小さい頃から貯めていた貯金箱を割って金額を確かめた。
かき集めると10万ゴールド入っていた。
これで…
とりあえず食料と、あと、馬を買わなくちゃ…
俺は5万ゴールドを握りしめ、街に歩いていった。
日差しは強くはなく穏やかな気候だったが、街に着いたのは5時間後で、さすがに汗でびっしょりだった。
早々に馬を買おう!
そして、馬屋に行き、3万ゴールドで馬を買った。
食料も買い込み、薪も買い、馬に乗せて帰りは1時間半ほどで着いた。
馬があっても遠いな…
てゆーか、こんな馬鹿みたいに広い土地、一体どうすれば?
とにかく、薪をくべ、風呂を沸かして入らなければ汗臭くて気持ちが悪かった。
風呂に入り、やっとさっぱりして、肉を焼きパンにバターを塗り食べた。
今日は3万3000ゴールドを使ったので、残金は6万7000ゴールドだ。
やばいな…
いくら馬を買ったからと言って…
そう、俺には稼ぐ方法が無かったのだ。
これは、生きていく上で決定的な弱点だった。
明日ダメ元でギルドの面接に行ってみようか…?
そんな事を思いながら、その日はふかふかのベッドで眠った。
夢の中だけが、辛い現実を忘れさせてくれた。
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