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「何っ!貴様唯斗なのか⁉︎」
間壁くんがメガネをくいくい上げ下げしながら取り乱した。
「ゆ、唯斗⁉︎お前本当に唯斗なのか⁉︎
ま、またお前は俺の男心を弄んだのか⁉︎」
……岩城くんに関しては全力でスルーすることにしておいた。
「それで、白坂くん。
キミはまたこんなところで何をしているの?」
「え、えっと、それはその……」
ゴゥワゴゥワと後ろに怒りのオーラを放ってる剛和さんに、僕は一か八か言ってみた。
「社会勉強的なアレです……」
再びこのセリフを剛和さんに使い回したけども、やっぱり案の定許されるわけがなかった。
◇
「そうか。
お前の仕業だったか……渉瑠」
いつ店内で暴れてあらゆる物を破壊するか分からないと思った羽原さんが、僕達の間に入って裏の休憩室へと事情説明のため連れて来させていた。
ちなみに集合する前に僕と羽原さん、そして稲津利さんは元の制服姿に着替えていた。
「まさか白坂くんだけじゃなく、翠花まで巻き込んでたなんて。
こっちはお前がここで働いてることも事情も知ってたから翠花に黙ってたっていうのに……ちょっとおいたが過ぎるんじゃないか?」
ぬるりと、剛和さんが無言でバツが悪そうにいた羽原さんに近づいた。
そんな剛和さんの行動に、あの昼間に見かけた大男、丸田という人物まで職場仲間を守るためか間に入ろうとする。
しかしそんな第三者の動きを予測してたように、岩城くんも威圧を放ちながら大男を牽制させようとする。
……いつ血が飛び散ってもおかしくない戦争が目の前に繰り広げられようとしていた。
「ま、待ってよ絢音ちゃん!」
そんな猛獣みたいな人達の中に、明らかに場違いである小動物のような稲津利さんが剛和さんを呼び止めた。
「く、くるみちゃんは何も悪くないよ!
くるみちゃんは、職場に欠員が多く出たからって私達を頼って、私達は自ら進んで臨時で働いてただけなの!」
稲津利さんが羽原さんを庇うために嘘を吐いた。
僕も稲津利さんに合わせるため頭を思いっきり何度も縦に振った。
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