【蛇と鈴】

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その当主である天逆海 深紅(あまのさまこ しんく)には謎が多い。 わかっていることといえば誰も逆らうことが出来ないということだろうか。 圧倒的な力とカリスマ性でトップに立ち続けているらしい。 各家の当主しか会えないようだが、風也はずっとその呼び出しを病を理由に応じてはいなかった。 代わりに風雅が出席していたが、今回は当主である風也が出席するようだ。 そして風雅も連れて行くということで、五十鈴は嫌な予感をヒシヒシと感じていた。 (お母様がいなくなってから、旦那様が何かに出席して一日中、外出するのは初めてじゃないかしら) 五十鈴がチラリと朱音の表情を盗み見ると真っ赤な唇が微かに歪んでいるような気がした。 風也がいなくなれば、朱音がやりたい放題するのだろう。 風美香も残るとなれば尚更だ。 しかし何の力も持っていない五十鈴に抵抗する術はない。 いつも何気なく庇ってくれる風雅もいなくなれば五十鈴の立場は……。 (何をされるのだろう。怖い……) 五十鈴は震える腕を握りしめた。 「朱音、私が留守の間……天狗木家を頼む」 「勿論ですわ。旦那様」
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