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風也に言われるまま頷いた。
風雅や朱音、風美香が立ち上がるのを見て五十鈴も慌てて立ち上がる。
早く扉を開けなければならないのに震える足がもつれてうまく動かなかった。
朱音と風美香からは憎しみと軽蔑のこもった視線が向けられていた。
風雅とは視線も交わることもなく横を通り過ぎていく。
隣から「何様のつもり」「わたしが一番なんだから」そんな声が聞こえた気がした。
*
三人を見送った後、五十鈴は風也の後に続いて歩いていた。
風也が足を止めるのと同時に五十鈴も動きを止めた。
風也の緑色の瞳が細められる。
「アレの言うことは全て無視しろ」
「……っ」
「それと絶対に離れから出るな」
「え……?」
五十鈴はその言葉に大きな違和感を持った。
離れから出るな、と言う指示ははじめてだったからかもしれない。
「絶対だ」
「…………はい」
アレというのは朱音の言うことだろうか。
今までは何を言われても黙っていたが何故今更こんなことを言うのか理由がわからなかった。
「使用人達にもそう伝えておく。ここから絶対に出てはならない……私が帰ってくるまでは」
「はい」
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