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風也は何度も言い聞かせるように「ここから出るな」と言った。
その言葉が、まるで呪いのように染み込んでいく。
五十鈴は「はい」と延々と返事を繰り返していた。
その日の晩は長めに胸元に光を当てていた。
恐らく長い時間、出掛けるからか体調に不安を覚えているのだろう。
五十鈴も力を使い果たしたのか体の怠さを感じて早めに寝床に横になった。
布団の中に入っても五十鈴は寒さを感じて震えていた。
風也と風雅が出掛けて帰ってくるまで一週間もある。
それまで五十鈴は何事もなく過ごせるような気がしなかった。
(……嫌な予感がする)
そんな五十鈴の予感は見事に当たることとなるとも知らずに自らを抱きしめるようにして眠りについた。
次の日、風也を本邸の使用人達と共に見送った。
隣からはこちらを鋭く睨みつける朱音と、見下すように見て怪しげに笑う風美香の姿があった。
逃げるように離れに戻ろうとするが、五十鈴を引き止めるように紅くて長い爪が思いきり腕に突き刺さる。
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