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「……お、奥様」
「来なさい」
「…………っ」
低く呟かれた声に五十鈴は肩を揺らした。
露出した肌が白くなるほどに爪が食い込んでいた。
しかし何を言われてもここから出てはいけないと風也に指示を出されていた五十鈴は抵抗するように腕を引いた。
しかし朱音は五十鈴の腕を離すことはなかった。
「昨晩、旦那様に……ここから出るなとキツく言われております」
「そんな嘘をついても無駄よ」
「嘘ではありません……!」
「お母様に逆らうつもり?いいから来なさいよっ!」
「……っ」
強引すぎる朱音の行動に戸惑っていると、離れで五十鈴の見張りと世話を任されたのか使用人が二人前に出る。
「奥様、おやめくださいませ!」
「五十鈴様の言っていることは本当です。離れから絶対に出すなと旦那様から言われております」
「……………」
その言葉に朱音が掴んでいた腕の力が弱まり、五十鈴がホッと息を吐き出した時だった。
「……関係ないわ」
力いっぱい掴まれてから叩きつけるように地面に叩き付けられた五十鈴はバランスを崩して廊下に崩れるようにして倒れ込んだ。
使用人達は朱音の乱暴な行動に目を丸くして動けずにいる。
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