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「出来損ないの分際でお母様に命令するなんて信じられないわ。本当、何でこんな女をお父様はお側に置くのかしら…………わたしの方が絶対に可愛いのに」
「ああ、風美香さん。あなたの方が美しく素晴らしいのは当然のことだわ」
「えぇ……お母様の子ですから」
無理矢理、髪を引き上げられて痛みから声を上げる。
グッと近づく顔、殺意がこもった視線が突き刺さる。
そのまま廊下から縁側に引き摺っていき、外に放り出されるようにして体は投げ出された。
ドサッという重たい音と共に体に鈍い痛みが走る。
しかし誰も声を掛けることはなかった。
先程、朱音に傷つけられたのを見ていたからだろう。
まるで汚いものに触れてしまったと言わんばかりに朱音は濡れたタオルを要求してから手を拭った。
五十鈴は地面に突っ伏したまま動けなかった。
「夕方までそこの草を抜いて全部綺麗になさい」
「……!」
「あははっ、いい気味」
朱音と風美香の笑い声が響く。
「せめて、靴を……」
「靴……? いらないでしょう?」
「ふふっ、惨めね」
そう言って二人は去って行った。
生い茂った草は辺りを見回してもかなりの量あるような気がした。
(やっぱりこうなってしまった……)
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