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五十鈴は屋敷の中で、使用人のようにして過ごしながら天狗木家の当主である天狗木 風也(かぜなり)の世話を離れでしていた。
予知能力という神通力の中でも特殊な能力を持っていた風也だったが、元々体が弱く病弱だった。
しかしその力は歴代当主の中でも恐ろしく強力だった。
長男である天狗木 風雅(ふうが)は風を操る力も申し分なく、浮遊能力を使い、次期当主としても申し分ない強い能力を持って生まれてきた。
妹の風美香(ふみか)は風の力はそこそこ強く使えるが、神通力は弱く、少し耳がいい程度である。
風也の妻である朱音(あかね)は、狐月家(こげつけ)から嫁いできたが、能力が低く苦労してきたのだと他の使用人が話しているのを聞いた。
五十鈴は風也と血は繋がっていても、朱音とは血が繋がってはいない。
五十鈴の母である鈴華(すずか)は、五十鈴が十歳の時に病で命を落としてしまった。
そんな母が最後に残した言葉は今でもよく覚えている。
『ゴホッ、今なら言える……あの人から解放されるっ、今なら』
『……お母様!』
『蛇を、呼んで……!必ず、あなたを……っ、助けてくれるから』
『お母様、血が…………もう話してはだめ!』
『"鈴"の名前と"蛇"が、必ずあなたを導いてくれる……!』
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