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しかし五十鈴は蛇を呼んだ覚えはない。
もしかしたらこの蛇が五十鈴を助けてくれる蛇なのだろうかと考えている時だった。
舌を出しながらこちらに近寄ってきた白蛇は五十鈴の側に駆け寄ってムクリと顔を上げた。
(私の言葉がわかったの……?そんな訳、ないわよね)
しかしつぶらな瞳は真っ直ぐにこちらを見つめていた。
五十鈴は恐る恐る土だらけの手を伸ばした。
すると手のひらの上にちょんと蛇が乗る。
ひんやりとした鱗の感覚が肌を滑る。
少し擽ったくて不思議な感触に笑みが溢れた。
「あなたが私を助けてくれる蛇なの?」
ただじっとこちらを見つめている蛇は何も答えてはくれない。
「ふふっ、こんなに可愛い君には無理だよね」
蛇はチロチロと舌を出し入れしている。
「誰か、私を助けて……お願い」
祈るように呟くと、白蛇は両手から落ちるように地面に向かい、振り返ることなく去って行ってしまった。
「……ばいばい」
とても不思議な蛇だったが、一瞬だけでも友達が出来たようで嬉しかった。
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