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母の口端から流れる赤い血が恐ろしくて堪らなかった。
しかし母は金色の目を見開いて最後の力を振り絞るようにして五十鈴の手を掴み、必死に訴えかけるようにして叫んだ。
『私のようになってはダメ!ここから、出て……あの人達を救って!お願、い』
『お母様、あの人って誰なの?』
『五十鈴……蛇を呼んで』
そう呟いて事切れた母の手をずっとずっと握っていた。
その時から『蛇を呼ぶ』という意味を考えているものの、五十鈴はその言葉の意味が今も分からないままだ。
その後、珍しく汗だくになり部屋に駆け込んできた風也が泣いている五十鈴を睨みつけてこう言った。
『何か……聞いたか?』
あまりにも恐ろしくて五十鈴は瞳いっぱいに涙を溜めながら首を横に振った。
五十鈴は先程、母が言ったことの意味を考える間もなく何かを確かめるように質問されたが何も答えずに黙っていた。
風也は小さく息を吐き出すと、母の体をどこかに運ぶように指示を出した。
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