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憎しみのこもった視線が五十鈴の背に刺さっていた。
朱音は母が風也を離れで独り占めしていたと思っている。
その為、朱音は母を深く深く恨んでいる。
それは本来自分がいるべき場所に母と五十鈴がいたからなのだと知った時にはもう何もかもが手遅れだった。
風也は本邸で常に母と五十鈴をそばに置いて、本妻であるはずの朱音を母屋で過ごしていた。
母がずっと寵愛を受けていると思われていあようだが、風也の母に対する態度は特別な感情などこもっていなかったように思えた。
それは娘であるはずの五十鈴に対しても同じだった。
成長するにつれて、その違和感の正体に気づく。
母と五十鈴は『道具』にすぎない。
そんな言葉がピッタリだと思っていた。
母はいつも風也の胸元に手を翳していた。
そこから漏れる金色の光が、何か特別なものだと気付いていたが、結局母も風也も五十鈴にそれが何なのかを教えてはくれなかった。
そして五十鈴が母と同じ力が使えるとわかった時の母の顔は今でも忘れはしない。
「ああ……やはり」
そう言って母は涙を流しながら五十鈴の体を強く強く抱きしめた。
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