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この力を使うことはよくないことなのかと思ったが、風也はそれを喜んだ。
『ああ、やはりな』
同じ言葉でも意味合いは大きく違うような気がした。
母の鈴華は天狗木家の血縁ではないことは明らかだった。
練色の髪に金色の瞳は天狗木家の特徴である黒髪と緑の人見とは真逆なものだったからだ。
不思議なことに、五十鈴も天狗木家の特徴を一切継ぐことはなかった。
それが何故なのか理由まではわからない。
何も見せないように五十鈴はこの地獄のような離れの中で囲われていた。
呼び出されたら金色の光を風也の胸元に当てるだけ。
それだけでも体には疲労感が押し寄せる。
この力は口外してはならない……まるで脅迫のように何度も何度も五十鈴に言った。
こんな生活から抜け出したくとも、いつも風也に見張られているのはわかっていた。
生まれた時からずっとそうだったと思う。
母は何度も逃げようとしたそうだが、ここから出ることも、五十鈴に大切な何かを伝えることも出来なかった。
いつも喉を押さえて何かを伝えようとする母を見ていた。
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