【蛇と鈴】

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その言葉に五十鈴は頷くしかなかった。 千蔭の顔が険しく、声も低くなったからだ。 『自由』という言葉は少し違和感と戸惑いを感じていた。 「で、出れないというわけではないぞ……!」 「ぁ……はい」 「要は、まだ時期ではないということだ」 千蔭の言葉に五十鈴は頷いた。 そうして電話を手に取った千蔭は「終わった」と一言だけ告げると受話器を乱暴に置いたあと、額に手を当てて考え込んでしまった。 真っ黒なスーツに身を包み、背が高く髪の短い女性とエマが直ぐにやってくる。 (あの時、車を運転していた人だわ……) 「お呼びでしょうか?」 「五十鈴を連れて行ってくれ」 「かしこまりました」 「千鶴、話がある」 「はい」 千鶴と呼ばれた女性は、五十鈴に向けて丁寧に腰を折る。 二人の間には信頼関係があるような気がしていた。 五十鈴が出て行った後に重苦しい空気が流れる。
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