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「申し訳ございません。宜しくお願い致します」
「かしこまりました」
五十鈴は背を向けて歩き出す。
「可哀想に……」「不気味ね」「涙一つ流さないなんて」
そんな声が聞こえた気がしたが、五十鈴はそのまま部屋に戻るために歩き出す。
「戻りました」
五十鈴が頭を下げて言葉を待っていると「入れ」と風也から声が掛かる。
部屋には座って無表情でこちらを見つめる風雅と不機嫌そうに顔を歪める朱音。
そして濃い茶色の髪をくるくると指で遊んでいる風美香の姿があった。
「天逆海(あまのざこ)様から、各家々の当主が呼び出された」
「今回も風雅が旦那様の代わりに出席されるのですか?」
「今回は私も出席するように言われている」
「……!」
「そうですわよねぇ。あの女が死んでから参加してないんですもの。天逆海様だって不思議に思われているはずだわ」
嬉しそうに手を合わせる朱音の仄暗い瞳はこちらに向かう。
天逆海家……アヤカシの力を引き継ぐ家々をまとめる大元だった。
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