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ニンギョウ アソビ
愛華は他の二人より早めに綾の家についていた。
次は自分。そんな恐怖はあったが、二人だけで人形のことを話す話題もなかったので、すぐに愛華と誠次の恋バナになった。
人形の襲撃もあってデートもなにもなかったけど、誠次は愛華には沢山メッセージを送ったり電話で話したりしていた。
「なんだよあいつ、やることやってんなー」
「まあ、うん、誠次ってそう言う所あるから」
愛華は照れくさそうにそう言う。少しは恐怖を忘れられているだろうか。綾はそう思いながら愛華と話しを楽しんだ。
5時頃になって誠次と将が一緒にやってきた。二人ともTシャツに膝までのパンツという楽な格好だ。綾はピンクの部屋着にカーディガンを羽織っているが、愛華はカワイイ柄の半袖シャツに短パン、白いタイツという部屋着っぽくはない服装だったが、みんな察して誠次がカワイイと言うまでいじった。
夏休みが始まったばかり。
完全に夜になるのは8時近くになった。綾が用意してくれたたこ焼きパーティーでお腹を満たし、ゲームをしたりして過ごしていたが、さすがに夜になると人形のことを話し合うようになった。
とはいえ昼間に大体の事は話し合ったし、新しい情報もない。頭のいい将がまとめた情報以上のものは出てこなかった。
0時近くなりそろそろ寝ようかという話しになった。ベッドに綾と愛華。床に男子二人が横になれるほど大きな部屋だ。
将が家族と電話している時に誠次が立ち上がった。
「俺ちょっと便所」
「あ、ついていくよ」
「いいよ、すぐそこだから大丈夫だろ」
通話を切ろうする将を止めて一人部屋を出て行った。
トイレは廊下の突き当たり。左右に弟と妹の部屋のドアを抜けた先だ。誠次はトイレの電気を点けてドアを開けた。
……ああ、何て意味のない。
人形が中に立っていた。膝の力が抜けて崩れ落ちる。
どうする?
バンッ! 倒れると同時に思いっきり床を叩いた。 バンバンバンッ!
「バーカ」
人形の手のひらからカッターナイフの刃が伸びる。誠次は両腕をクロスして顔をガードした。
「……」
「どうしたの?」
誠次が目を開くとすぐ手前のドアを開けて綾の弟が顔を出していた。トイレの前で床に倒れている誠次を不思議そうに見ている。
「誠次! 大丈夫?」
続いて愛華達もやってきた。
「……ふう」
誠次は小さい切り傷だけだった事に胸をなで下ろした。
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