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翌日の金曜日。夏休み前の短縮でお昼に授業は終わった。
部活に向かう生徒、早々に友達と下校する生徒、学食に向かう生徒などいる中で四人は集まりパンや弁当などを食べ終えると誠次の持ってきたソレを見ていた。
「これ、胴体のベースにいいだろ」
太さは20センチくらいだろうか、薄汚れた1メートルくらいの青く細長い物体。
「なにこれ?」
綾はあからさまに汚いものを見る目。
「俺が使っていた抱き枕。子どもの頃からずっと使っていたんだぜ」
「うわぁ」
綾と将が同時に顔をしかめた。
「うわぁってなんだよ。綺麗だし臭くも……うん、大丈夫だ。ほら」
誠次に抱き枕を向けられて愛華はクンクンと臭いを嗅いだ。
「うん、まあ、大丈夫かな」
そっけなくそう答えたが、心臓は爆発しそだった。
誠次の匂い! 誠次の匂い!
何か変態っぽいと思いながらドキドキは止められなかった。
「そもそも捨てるものだからどうでもいいよ」
向けられた抱き枕を押し返しながら将は言った。
「俺の抱き枕の事はもういいから、お前らはどうなんだよ?」
綾は白いワンピースと黒い長髪のウィッグ、それにいくつかのぬいぐるみを持ってきた。
「お、いいの持ってきたな。高そうだけどいいのか?」
「どっちも使わないからいいよ」
「さすが金持ちエロ女」
「エロは余計」
「はは、悪い悪い」
綾は年上の彼氏がいるしそんな気持ちはないのは知っているけど、仲良くしている二人に少しモヤモヤする愛華。そんな愛華のわずかな表情に気づいたのか、綾は将に話しかけた。
「将はなに持ってきたの? 学校一の天才なんだからがっかりさせないでよ?」
「勉強とイタズラは使う脳細胞が違う気がするが、まあ見てくれ」
わざと秀才キャラっぽくクイッとメガネを指であげて紙袋の中身を出した。
30センチくらいの細長い円柱の棒が八つ。それ以外は工具やネジなどの工作道具と布や木材の小さな廃材、裁縫道具。それに生地に絵や文字がかけるクレヨンなど便利なグッズが出てきた。
「かゆい所に手が届くな。さすが天才」
「やっぱり天才って視点が違うよね」
誠次と愛華が賞賛。
「ところでこの棒はなんだ?」
誠次が棒を手に取って訊いた。
「手足だよ。二本くっつけたら丁度手足の長さになるだろ」
「ああ、なるほど」
「感動が少ないな。わざわざ買ってきたのに」
将は不満そうだ。
「愛華は?」
いつからだろう、下の名前で呼ばれるようになったのは。
いつからだろう、その事が嬉しく思うようになったのは。
「愛華?」
「え? うん、これ」
愛華は布袋から50センチくらいの人形を取り出した。デフォルメされたアニメの女の子の人形で、顔が大きく体は顔の三分の一くらいしかない。
他にも段ボールに押し込んでいた古いぬいぐるみをいくつか持ってきた。
「お、いいじゃん。ちょうど顔のサイズだ」
誠次は自分の持ってきた抱き枕に愛華の人形をくっつけて満足そうに言った。
「怖さは全然ないな」
ニヤリとする将。
「それをこれからやるんでしょ」
綾もイタズラっぽく笑う。
「なんだか楽しいね!」
愛華は本当にそう思った。
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