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「とりあえず作ろうぜ」
誠次は将を見た。まずは頭のいい将が全体のデザインを考える。誠次の抱き枕を胴体にして、頭は愛華が持ってきた大きなぬいぐるみを使う。肩と腰をぬいぐるみを利用して作り、将の持ってきた棒で手足を作る。
あとは余ったぬいぐるみを解いて生地と綿を肉付けに使う。最後は綾の持ってきた白いドレスとウィッグを付けて完成だ。
早速それぞれが作業を始めた。
「なんかグロいなあ」
愛華は自分が持ってきた人形の頭を切り離す為に首をカッターナイフで切っていく。ぬいぐるみ自体はもらい物で特に思い入れはないが、それでもあまり気分の良いものではなかった。
そんなことを気にしながらやったからだろうか
「痛っ」
最後の切り離す所で指先を切ってしまった。
「おいおい大丈夫かよ?」
「うん、ちょっとだけだから」
爪の横を少しだけ切っただけでティッシュを当てるとすぐに血は止まった。
「そうだ、折角だから」
誠次は愛華の指を切ったカッターナイフの最初の刃を折ると、残りの刃を使って抱き枕の真ん中を縦に切り裂いた。
「なにしてるの?」
愛華が不思議そうに見ていると、折ったカッターの刃を中に入れてホッチキスで留めた。
「なんかこの方が呪われそうじゃね?」
「えー、私の血が?」
「違うよ、愛華を傷つけた刃物だよ」
「ふーん」
冷静を装っていたけど、愛華は自分の顔が火照っているのがわかった。
「指、大丈夫か?」
「うん、もう血も出てないよ」
「じゃあ胴体に縫い合わせてくれ」
誠次から抱き枕を渡される。まだちょっとドキドキする。
愛華は抱き枕にぬいぐるみの大きな頭を縫い付けようとしたが縫い物なんて普段やらないのでもたもたしていると、将が代わるといって手早く縫い付けた。
「さすが将、なんでも器用にこなすね」
「女の子ならこれくらい出来ないと嫁に行けないぞ」
「時代遅れー」
綾が小さなぬいぐるみを将に投げた。
「それが現実だ。好きな人がいるならなおさらな」
将は軽くぬいぐるみを受け止めて言った。
愛華は思わず誠次に目が行くと、なんだか恥ずかしくなった。その誠次は自分の作業に集中している。そしてしばらくするとぱっと明るい笑顔を見せた。
そんな姿に見とれてしまう。
「出来た。俺って天才」
誠次は将が持ってきた木の棒を二本組み合わせて人形の手足を作っていたのだ。
「どこが天才なの?」
愛華は気持ちをごまかすように訊いた。
「ほら、これ、完璧な関節」
誠次は棒をキコキコ動かす。本物の関節と同じく片側にしか曲がらないようになっている。
「いや、そもそも関節なんているか?」
将も一本持ってキコキコしながら訊いた。
「こういうこだわりが大事なんだよ」
こうして大まかな素材ができあがると、余ったぬいぐるみをバラして木の棒で作った手足に巻いたり、抱き枕の胴体に肩や腰を作ったりした。
不格好ながら完成した体に綾が持ってきた白いワンピースを着せて頭に黒いロングのウィッグを被せる。
「おお、なかなかいいじゃねーか」
誠次は満足そうにうなづく。顔こそアニメ顔だが、遠目に見たらなかなか不気味な人形が完成した。
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