12人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー地図上で滑らした陸路は初めて通る山道が多く、海についた時には水平線と空の境が暗くてわからない時間になっていた。寒さもあって少し体調が悪そうなキミは、リクライニングを斜めにして眠りについていた。
たまたま車に乗せたままだった洗濯乾燥機済みのタオルケットは重宝し、良好な暖気も体温を保ってくれた。
回数の少ないワイパーを止め、本来なら太平洋を見下ろせるパーキングにそっと降りてタバコに火をつけようとしたけど、潮風でジッポが湿気る。
「先輩。ごめんなさい、・・・海についていたのですね。」
窓を開け呟いたキミは、朝とは別人のように弱々しい表情で車内のデジタル時計を見るなり白い数粒をカバンのプラスチックケースから取り出した。
「薬を、のまなくちゃ。」
最初のコメントを投稿しよう!