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廃帝の復活
夜中にスマートホンが鳴り、森下は起こされた。
明日は非番で、少し飲み過ぎたせいもあり自分が今何処で何をしていたか一瞬、わからなかった。
しかし習慣とは恐ろしいもので、それが会社からのものだとわかるとすぐに酔いが吹き飛びベッドから飛び起きた。
この時間の電話は緊急を要するものだ。
「お休みの処申し訳ありません…
上原です。」
丁寧だが機械的な上司の上原の声がスマートホンから響いた。
思わず溜息が出てしまいそうになり、森下は慌ててそれを飲み込む。
「お疲れ様です…」
何とかそれだけを発声した。
「3課から指名で応援要請が来ました。
明日の朝イチで3065会議室で
捜査会議が行われます。
資料を送りますので会議迄に目を通しておいて下さい。」
「3065 了解しました。」
「それではよろしくお願いします。」
通話の終了直後に会議室の番号を忘れないうちにメモした。
番号を忘れて再度、上原に聞こうものなら後からネチネチと嫌味を言われるのは目に見えている。
要らぬストレスを溜め込みたくはない…
数秒後に資料が送られてきた。
今回は24時間で消えるタイプの資料だ…
1人1人の文体が微妙に違い、流出した際には誰が流したか分かる仕組みになっていた。
こういう対応はいつもの事ではないのだが、まるでミッション インポッシブルだなと感心する。
今回は緊急を要して特に機密性が高い案件のようだった。
資料に目を通した森下は肝を冷やした。
コレは捜査などではない、ただの敗戦処理でしか無かった。
将棋で例えれば、後一手で詰みの状況。そして対戦相手は超AIノアだった。
この状況で政府が直接、対策室を立てるのではなく、コチラに御鉢を回してきた理由は隠蔽しかないのは明白だった。
しかも対策本部の本部長は、あの島流しにされていた水上 司になっている。
カミソリ水上が戻ってくる…
自分が応援要請に指名された理由も、これで納得がいった。
50万の市民の命がかかったAIの反乱…
AIが独立を宣言するなんてSFの世界の話だ。
「何でもありだな…」
思わず呟く。
明日は宇宙人が大挙して押し寄せるかも知れない、自分の伺い知れない所で物事は進んでいくものなのだ。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して半分程を一気に飲み干す。
時計を見上げ逆算した、後5時間は眠れる。
[ちゃんと寝ないと仕事にならん]
死んだ婆ちゃんの口癖だった。
アラームをかけて森下が布団を頭から被ると、30秒後には気を失うように眠りに落ちていた。
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