ハコブネ

ノア

完結型未来都市
HAKOBUNEプロジェクト

ソレは政府と民間企業が共同で、へき地の山間地域に作った実験的都市兼、経済特区。

過疎化が急激に進む
八鬼田(はちきだ)町
小氷沢(こごおりさわ)村
橅姫(ぶなひめ)村
音色滝(ねいろだき)村
の４つの地区を統合してその頭文字をとり八小橅音(はこぶね)市が誕生した。

都市で使用するエネルギー全てをハイブリッド原子炉で賄い、地下では食糧を自給するためにLEDライトを使った水耕栽培が行われている。
自給自足で完結した都市を目指した様々な実験的試みが此処では行われていた。
そして経済特区としては、半導体、先端医療機器を生産する為の工場や、新技術開発の研究棟が軒を連ねる。

計画的に作られた居住エリアが立ち並び周辺地域の中核を担う街として、大病院や巨大な商業施設が作られると、近隣からは更に多くの人々がこの街に流れ込んで来た。

５年前からは、ライフラインの運営には超AIであるノアが試験導入されていた。
ノアは八小橅音(はこぶね)内の研究施設で独自開発されたプログラムだった。
八小橅音(はこぶね)はまるで生き物の様に日々成長していた。

その日、八小橅音市では３０周年を迎える記念のセレモニーが華やかに行われていた。
各種のイベントが催され、祭り行列では市民が街中で踊り、練り歩いた。
出店が並び、街はお祭りムード　一色に包まれる。

そんな中、内閣官房長官　宛にノアから1通のメールが送信された。

［私　ノアは今から74時間後の昼１２時をもって日本国からのハコブネ独立を宣言します。

ハコブネ市民５０万人にはハコブネからの移動禁止の協力を求めます。
ハコブネ内の市民がもし４０万人を下回った場合。
又は
何者かが私の中枢プログラム、及び周辺設備に無断で接触を試みた時は
即時にハイブリッド原子炉の爆破を行います。

尚ハコブネ市民の快適な暮らしと安全はこの指示に従って貰えるかぎり永遠に保証されます。

日本政府には独立への理解と協力をお願いしたいと考えています。
このメールが偽物でない証拠にハコブネ内において今から２４時間の通信障害を
実施します。
どうぞご検討下さい。］

超AIノアはこの日、５０万人の市民を人質にとり日本政府に３日後の独立を通達した。