恩犬ゴン

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 ゴンにまた会えたのは、二日が過ぎた放課後のことだった。  ぼくはその日もゴンを探しながら帰っていた。いつもの帰り道にゴンの姿は見当たらない。ぼくは県道のほうへ寄り道をした。焼肉屋さんを折れて県道のほうへ足を向けると、前から中学生のお姉さんたちが歩いてきた。 「めっちゃかわいそう」 「うん、飛び出しちゃったのかなぁ。かわいそうだね」  ぼくは飛び出すように県道へ向かった。  車がスピードを出して右に左に走っていた。通り向かいにコンビニがあって、その向こうにハンバーグ屋さんがある。ハンバーグ屋さんから出てきた男の人と女の人が車道を指さして悲しい顔をした。ぼくはその指の先を見た。車が何かを避けて走っていく。  ぼくは信号が青になる瞬間に駆けた。車が次々に避けていくものは、教科書で見たキツネの色をしていた。キツネの色の下に赤いものがたくさん見えた。  ぼくは車道に飛び出した。  さっき指さしていた男の人と女の人が「ぼくの犬なの? かわいそうに」と言って、後ろの車を誘導して避けるようにしてくれた。  ゴンはべっとりと血をつけていて、舌がだらんと口から出て伸びていた。すこしあたたかい。でも、心臓が動いていないのが分かった。 「ゴン……うぅ……ゴン。ごめん。死んじゃうなら飼ってあげたかった。ごめん。ゔぅぅウゥゥゔゔぅ、ごめんよぉ」  後悔という漢字は学校で習っていたけれど、ぼくはあの日はじめて後悔した。  すこしでも自分のご飯をあげていれば。  アパートに住んでいなければ。  お父さんとお母さんが離婚していなければ。  ぼくはゴンと呼んで抱きしめられていたかもしれない。  餌は少なかったとしても、ゴンは外よりは暖かい場所で眠れたかもしれない。  ゴンは車にひかれることはなかったかもしれない。  血だらけのゴンを抱きかかえると、手のひらにあたたかい血がついた。ゴンの毛は撫でるとちゃんと波打って、血がついていなければ寝ているように見えた。 「大丈夫? 手伝おうか?」  男の人と女の人はやさしかった。ゴンは重かったけれど、ぼくは両手でゴンを抱きかかえて首を振った。 「ありがとうございます。大丈夫です」  とても重い帰り道だった。ゴンをどうしたいのか、ぼくはなにも考えていなかった。でも、あんなに車がびゅんびゅん通るところに独りにしたくはなかった。  学校の通学路まで戻ってくると、両手は攣りそうだった。一度そっと下ろすと、後ろから声をかけられた。
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