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クロークで天海と会った際、朱の後から山河はやって来た。荷物も預けた。しかしネームプレートは持っていた。天海をしーちゃんと呼んでいたし、仲が良く事前にもらっていたからかと思っていた。しかし会場に入ってからも山河は、いいや全員が互いを名前で呼び合っていたのだ。朱一人だけが苗字で呼ばれていた。
思い至った瞬間、えも言われぬ寒気が朱を襲った。何故自分が呼ばれたのか。この同窓会の趣旨は何なのか。そう言えば、自分に会いたがっていると思っていた二人は何処にいるのか。
「ねえ。天海さんは私と特に仲が良かった二人、覚えてない?」
「嘘。緑川と青木の事も覚えてないの?」
天海の声音がワントーン落ちた。そして二人を呼び捨てにした事に、朱は驚いた。
「腰巾着の二人は、あなたのこと覚えていたのに。まあ、可哀想とは思わないけど」
「二人来てるの!」
さらに天海の口調は豹変したが、朱は知っている二人がいる事に安堵した。
「来られる訳ないじゃない。死んだんだから」
一瞬、天海の言っている事の意味がわからなかった。朱は聞き間違いかと、ゆっくりとそれを言葉にした。
「死んだ?」
「そう、二人とも。あれ。みんなー。緑川と青木って事故だっけ自殺だっけー」
「え、ちょっと」
天海の抑揚のない声が会場に木霊し、皆の視線が向けられ朱は焦ってしまった。しかし口々に返ってくる感情のない自殺でしょという響きに、朱は怖さを感じた。
「だってさ。赤井、さん」
みんなの答えを楽しむような天海の微笑みに、恐怖が勝った朱は後退った。
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