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『黒田朱様 私立ダリア女学園 第四十六期 高等部同窓会』
朱は紅茶を飲みながら、心当たりのない差出人から届いた封書に、名前しか覚えていない母校の名を見た。
案内状は、どうやら仲間内の集まり的な同窓会のようだった。誰とも連絡を取っていなかった自分に、しかも苗字も住所も変わっているのに届くものかと驚いた。
『会費無料 お帰りの際に記念品をお渡しします』
『赤井さんと会いたがっている方もいます。気軽にご参加ください。 天海』
印刷された案内状の最後に、手書きで添えられた旧姓。少なくとも幹事の天海は自分を知っているようだと朱は思った。
「覚えてる人、居るかなー」
卒業アルバムを捨ててしまうほど、朱は過去に執着なく生きて来た。事業家の父親に言われるがまま中高一貫のダリア女学園に入り、これといって思い出なく過ぎ去った時間だった。ただ唯一自由な時間だったことは間違いないと言えた。
「そういえば名前は何だったかな」
思い返してみると、いつも一緒にいた友達が二人がいた。友達といっても卒業してそれきりになる程度の間柄ではあった。多分、会いたがっているとは、その二人のことだろうと思いえた。
父親の勧めで結婚し、二十三歳ながら家庭に収まっていた朱にとって、同窓会は刺激的な事でもあった。
「タダで記念品も出るとか、さすがご令嬢の集まり」
招待状をテーブルに投げると朱は鼻で笑った。どうせ家で一人の時間を持て余しているのだからと行くことにした。ただ問題は夫の許可がおりるかだったが、娘が協力してくれれば大丈夫だろうという確信があった。
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