同期の花園

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 朱はノックを返した。するとまたノック。また返す。またノック。 「入ってるってば!」  思わずドアを叩いて叫んだ瞬間、頭上から水が降って来た。まさにバケツをひっくり返したような水で、朱はずぶ濡れになった。 「誰よ!」  個室から飛び出すと、トイレには朱以外誰も居なかった。  怒りの感情に動かされた朱は、これみよがしに音を立てて会場に戻った。全員の視線が朱に注がれ、中には笑みを讃えている者もいた。 「ふざけんな! 昔やったことを謝って欲しいの。だったら、そう言えばいいじゃない! こんな馬鹿みたいなことして。私のせいで人生狂ったみたいに責任転換して、子供の頃と今は関係ないじゃない。 いい大人なんだから自業自得でしょ!」  朱は会場内を。皆がひそひそと話し出す。その不協和音が蠢く虫の音のように朱の神経を蝕んでゆく。 「濡れて元気になるなんて。死にかけの人魚みたい」  背後から不意に声をかけられ、振り向いた朱が睨みつけた相手は天海だった。 「これで気が済んだ? 私に八つ当たりしたって、あんたに起きたことは、あんた自身が招いたことだから! 同窓会とかくだらない。帰るわ」 「そうね。あなた達に起きたことは、あなた達自身が招いたこと。だよね」  去りかけた朱は、天海の言葉に足を止めた。 「あなた、たち?」 「そ。私達は三度目なの。会場選ぶの大変だったんだから」  何が楽しいのか天海は満面の笑顔だった。 「まさか! 翠と葵の転落事故って……」 「どうだっていいじゃない? あんな人達。さ。メインイベントはこれからよ。あ、か、い。さん」
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