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6
そしてその日はやってきた。
だって満月だったから。
初対面の天使を思い出してしまったから。
「ねえ、ちょっと君!」
例によって俺を認識してエレベーターホールを離れようとした彼女に、俺の不満や憤りが破裂してしまった。
「へっ……?」
彼女は大きく肩をふるわせ、怯えた表情をこちらに向けてきた。しまった。やってしまった。だけど俺だって傷ついてるし、怒ってもいるのだ。
「大声だしてごめん。でもさ、そうやって俺のことだけ避けてるのってなにか理由があるの?こっちだっていい気持ちはしないんだけど?」
ガラス壁に背中を張り付けるようにして固まってしまった彼女に少しだけ罪悪感が膨らみつつ。でもその態度はかなり失礼だとキッパリ伝えてやった。
てっきり怒り出すか、はたまた泣き落としにでもかかるかと思ったのだが。
「ごっ、ごめんなさい。そんなつもりは……なくて」
ん?
恥じらうように潤んだ目元。
それはどこかで見たような、可愛らしい瞳。
なんでだろう?
無性にクレームブリュレが食べたくなってきた。
「お客さんカッコよくて。だから恥ずかしくて、私……」
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