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ん? 今お客さんて言ったか? 「…………あっ!?」 その目元。 マスクをしていないし髪もまとめていないが、その目元は。 「居酒屋の、店員さん!?」 物静かで真面目な店員さんだ。いつも俺の好物をカウンターで焦がして仕上げてくれる彼女。 「失礼な態度で、すみませんでした……!」 「え?ちょっと待って!」 気が動転したのか、彼女はマンションの外へと走っていってしまう。 「待てってば!ねえ、話を!いや、まず名前はっ?何階に住んでるの!?」 俺のわめきが聞こえたのか、まもなく足を止めた彼女は真っ赤な顔でこちらを振り返る。 月明かりが雨のように、彼女に狙いをさだめて降り注ぐ。 ………… それは秋のこと。 暗くて明るい、月夜の遭遇。 夜の片隅で 砂糖のように甘く焦がされた日のこと。
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