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僕の名前はロボ。
都市部の不況で職を失い、2年ほど前にこの村に移住した。小さい頃から身体だけは大きかったので、それを活かして木こりをさせて貰っている。
妻の名前はブランカという。妻とはあの満月の夜に出会い、その翌日に結婚した。
夢遊病はあれから発症していない。妻との出会いが僕を変えたのだ。
ここ最近は妻の妊娠も分かり、僕はまさに幸せの絶頂にいた。
もちろん、うかうかはしてられない。
妊娠中の妻には栄養のあるものを食べさせてやりたいし、産まれてくる子どもの食い扶持も稼がなければならない。
仕事はより一層忙しくなった。しかし、今はその忙しさも幸せの一部のようで、好ましく思っている。
そんなある日、村長から村人全員に召集がかかった。村人全員が広場に集められ、不安そうにしながらも、村長の言葉に耳を傾ける。
「本日、モリソン一家が惨殺されているのが見つかった。
酷い有様だった。殺されたのが家の中でなかったら、誰が殺されたのかも分からなかったところだ」
村人に動揺が走る。
ここは人口200人と少しの小さな村だ。モリソン一家の3人が殺害されたともなれば大事件である。
さらに、村人たちがこれほど騒いでいるのには他にも理由があった。
「先月、ライリー一家が殺害された事件につい
ては皆も覚えていると思う。2ヶ月前にはローデン、3ヶ月前にはハイデンが殺された」
そう、この村で殺人事件が起きるのはこれが初めてではない。これで4回目。毎月誰かが殺されている。
そして村長から衝撃の発言が飛び出した。
「事件の周期はちょうど1ヶ月。全て『満月』の日だ。そして、死体にあった傷跡とわずかな目撃情報。
これらから、私たちは一連の事件の犯人は『人狼』であると判断した」
「人狼」。普段は人の姿をしているが、満月を見ると狼の姿になるという怪人だ。
人狼なんて想像上のものではないのか。
状況を飲み込めきれていない村人をよそに尊重は続ける。
「騎士や狩人、占い師たちには今まで以上に人狼対策に励んでもらうのは勿論、村人たちにも対策に協力してもらう。
毎月、満月の夜の前日に村人全員で投票を行い、票数が最も多かった者を容疑者として拘束する。
次の日の夜、その容疑者を満月に晒し、人狼に変身したならその場で撃ち殺し、『処刑』する」
そう言うと、村長は銀色の弾丸を掲げた。伝承では、人狼は銀製の弾丸でのみ射殺できるとされている。
「毎月、『容疑者』らしき人物の情報を集め、推理してくれ!
見事推理で人狼を見つけた者には賞金を与える!
村全員で人狼を打ち倒すぞ!!」
その村長の宣言がはじまりの合図となった。
こうして僕たちの村全体を巻き込んだ「人狼ゲーム」が始まった。
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