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若くして出世した弊害とでも言おうか、部長は社内の人間関係に慎重な一面がある。私みたいな地味な社員を起用するのも無駄な争いを避ける為。
「……書類チェック、手伝いますよ」
本を閉じてパフォーマンスめいた溜息をつく。
「え? いいの? 昼休み中なのに?」
「ご自分が労えって言ったじゃないですか」
「わぁ、助かる! ありがとう!」
無邪気に喜ぶ振りしながら任せても良い作業を瞬時に選定する。相変わらず判断力が凄い。
部長はたとえ私が手伝いを申し出なくても、それはそれで構わないと思う。基本、彼は人に期待をしないのだ。
「明日はクリスマスイブだね。岡崎はサンタクロースに何をお願いするの? 僕達は良い子にしていたもんな、きっとプレゼントを貰えるさ」
部長の席へ書類を受け取りに行き、予定がぎっしり書き込まれた卓上カレンダーを目にする。
私の知る限り、部長が仕事の期日を守らなかった試しはない。どんなに多忙でもデスクは整理整頓されており、軽口を叩く一方で几帳面さが伺えた。
「プレゼントですか」
ふと窓の外を探る。天気予報によれば数年ぶりにホワイトクリスマスとなるそう。
「欲しい物は無い?」
「……そうですね、雪が降らないで欲しいですかね」
「は? 降らないで欲しいの?」
「えぇ、電車が止まったら帰れなくなるので」
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