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今年は平日のクリスマス、私は平常運転である。
帰りに値引きされたケーキを買うくらいはするかもしれないものの、侘びしいイブの過ごし方をここで披露しても仕方がないだろう。
「……部長?」
部長はポカンとしている。
「部長?」
繰り返してやっと意識を戻してくれた。
「あ、あぁ、すまない。斜め上を行くおねだりで驚いてしまって。流石の僕も天候は操れないよ。で、雪を降るのは止められないがこれをどうぞ」
目の前へ可愛くてラッピングされた包みが差し出される。
「明日は出張でね、部長サンタクロースから一日早いクリスマスプレゼント」
「わ、私に?」
「この状況で君以外に渡していたら怖いでしょう? いつも頑張ってくれる君にお返しをしたくてさ。会社的にこういうのは駄目だが、休憩中に働かせてしまっているし。貰ってくれるかい?」
「そういうつもりで手伝ったんじゃーー」
しっ、部長は皆まで言ってくれるなと人差し指を口元に立てた。
私達しか居ない室内なのに鼓動が賑やかで落ち着かない。
「もちろん、分かってる。これを受けっ取ったからといって無茶なお願いはしないし、僕を意識しないで欲しい。今まで通り、上司と部下の関係でありたい。僕はね、君が男として見ないでくれるのに救われているんだ」
普通、贈り物とは好意を示す手段。それなのに部長は私を遠ざけたくてプレゼントをしようとする。
あぁ、そうか。私は牽制されているのだと理解した。
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