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「社内では僕がイケメンだから出世したと噂する社員もいれば、顔が好みと言い寄ってくる社員もいる。仕事ぶりではなく見た目でどうこう言われるのは心外だよ」
そうまで言われてしまうとプレゼントを受け取らない訳にはいかない。良い言い方をすれば部長の贈り物は友情の証なのだろう。
「ーーありがとうございます。さっそく開けてみても?」
「あぁ、あぁ! 気に入ってくれるといいんだが」
私の言葉で部長は重苦しかった雰囲気を一気に散らす。するするリボンを解くとブックカバーが出てきた。
「どうだ? これを使えば昼休みでも官能小説を読めるだろう」
「読みませんよ」
「ふーん、なら僕の秘蔵のコレクションを貸そうか?」
「部長は読むんですね」
「まぁな、当分は恋人を作る気はないしな」
部長は天の邪鬼だ。自分を好きになって欲しくない、男として見ないで欲しいなら優しくなどしなければいい。
ブックカバーのデザインとカラーは私の趣向をばっちり押さえてあり、これで意識をするなとは残酷じゃないか。
こんな素敵なクリスマスプレゼント、両親以外では初めて貰った。本当はブックカバーを掲げ、飛び跳ねて喜びたい。
好意を抱かない代わり、彼の側で仕事ができる。この交換条件は私にとっても悪くないかもしれない。部長に片想いしても気持ちが通じ合う確率はーーゼロ、どうしたって報われないのだ。
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